社会人から学生に戻り、何もかも新鮮だった新学期から、課題やテストに追われて悪戦苦闘し、やがて睡眠時間が激減する臨地実習を経て、そのまま怒涛の看護師国家試験受験へ…!
目まぐるしくも充実した学生時代を経て、いよいよ社会人として再出発の4月。
第二の人生を歩み始めるやる気と期待に溢れて病院で働き始めましたが、現実はとても厳しく、自分でも信じられないことに、勤続1年5か月で退職してしまいました。
私は社会人として一般企業2社で働いたのち、アラフォーにして看護師になった、社会人経験看護師です。
この記事は、社会人から看護師になって感じた壁と、あのときもっとこうすれば良かったということを自分なりに振り返って言語化したものです。
個人的な経験なので、読んでいただいている方に共通することもそうでないこともあると思いますが、働き始めたばかりの社会人経験のある看護師さんが、私のようにならないように、うまく立ち振る舞うヒントを見つけていただけたら、と思って書いています。
新人看護師は何を求められているか正しく把握せよ
まず、声を大にしてこれを言いたいです。
新人看護師に求められていることは、「時間管理を行うこと」「同じミスを繰り返さないこと」「患者さんの変化は逐次報告すること」の3つです。
新人のうちはとにかく覚えることが多く、混乱することも多いと思いますが、どんなときでもとにかくこの3つを徹底することが最重要と心得ておきましょう。
他のことができていたとしても、この3つができていなければ、間違いなく「仕事ができない新人」というレッテルを貼られます。
そして一度このレッテルを貼られてしまうと、何をしても否定的な目で見られ、そこから挽回するためにはレッテルを貼られていない人の何倍もの努力を必要とすることになります。
同じ行動を取っても自分だけが否定的な目で見られる精神的苦痛は想像を超えるものがあります。
他のことは、先輩たちからの信用を勝ち得てから身に付けていけばいいのです。
とにかくレッテルを貼られる前に上記3つを実践して信用を勝ち取ること。
これが、看護師の最初にして最重要のミッションであることをしっかりと胸に刻んでください。
時間管理を徹底せよ
私は病棟の中で、いつも仕事が終わるのが遅い方でした。
今振り返ると、要因は2つあったと考えています。
「絶対に時間通りに業務を終わらせる」という意識の不足
1つはシンプルに「絶対に時間通りに業務を終わらせる」という意識が足りていなかったこと。
つまり「時間通りに業務を終わらせる」ことよりも「自分の満足のいく仕事を行う」ことを優先していたということです。
そして、先輩への申し送りの時間についても同じことを行ってしまっていました。
私の勤務していた病棟では、新人看護師は「夜勤者からの申し送りを受けた後」、「前半休憩のメンバーがに休憩に入る前」「夜勤者に申し送りをする前」の1日3回、プリセプター看護師とリーダーそれぞれに申し送りを行うというルールがありました。
しかし、看護師の仕事に突発的事象はつきもの。
報告を行いたいタイミングで、プリセプター看護師が取り込み中だったり、患者さんからオムツを替えて欲しいと言われたり、浮腫が強い患者さんになかなかルートキープができなかったり。
先輩から申し送りが遅いと言われることもありましたが、「時間通り申し送りができる日もあれば、できない日もあるよね」という意識でいました。
バカ!!!
当時に戻れるならば2、3発頬をはたいて「目を覚ませ」と自分に言ってやりたいです。
先輩が見ているのは、「業務を丁寧にこなしているか」や「申し送りを正確にできているか」ではありません!!!
もちろんそれも大切なのですが、「時間管理ができること」すなわち「時間通りに申し送りができること」が大前提であり、「業務を丁寧にこなしているか」や「申し送り内容が正確か」はその前提ありきの上で、その後に見てもらえるポイントなのです。
「他の人に頼ること」に対する苦手意識
もう1つは「他の人に頼ることが苦手だった」こと。
もしかしたら社会人経験のある看護師の中には私と同じしくじりをする方が多いのではないでしょうか。
自分の仕事は自分で行う。
当たり前のことです。
でも、他職種の人にやってもらえるはずの業務まで自分で行っていたら?
どう頑張っても他の看護師より仕事が遅くなります。
自分がやるべき仕事、他の人に行ってもらうべき仕事、まずはその見極めを行いましょう。
具体的には看護補助さんやクラークさんに行ってもらえる仕事は何かを知りましょう。
そして、ここがとても大切なので2回言いたい位ですが、看護補助さんとクラークさんが1日どのようなスケジュールで動いているかを把握しましょう。
私は看護補助さんやクラークさんとコミュニケーションがうまく取れず、緊急処方の受け取り(病院内の薬局に取りにいかなければならない)や、患者さんの検査出し等を依頼しても、「今忙しいんだけど」と断られ、自分で行うことが多くありました。
他の看護師から頼んだときと明らかに態度が違うことも感じていました。
いじめ?それならもう自分でやってしまった方が早いかも…。
否!!!
否です!!!
自分でやった方が早いわけありません。
なんでも自分でやっていては、他の人との業務スピードに差がつくばかりです。
ここで、看護補助さんとクラークさんが1日どのようなスケジュールで動いているかを把握しておくことが大切になってくるのです。
看護補助さんやクラークさんは、看護師から依頼される仕事以外に独自のやるべきことを抱えています。
忙しい時間帯にいつでもできそうな仕事を頼まれれば、それは文句の一つも言いたくなるでしょう。
知らないうちに相手を苛立たせていることが積み重なって嫌悪感を持たれれば、フォローをしてもらえる機会はどんどん減っていきます。
新人として配属されてすぐが望ましいと思いますが、休憩中などを使って、看護補助さんやクラークさんに1日の流れを時間ごとに教えてもらってしっかりと頭の中にたたきこむことで、関係性は劇的に改善します。
配慮してもらおうと考えるのではなく、まずこちらから配慮を示すのです。
ベテランの看護補助さんやクラークさんの仕事ぶりは頼もしく、看護師の先輩とはまた違うアドバイスもたくさんもらえます。
日頃から十分なコミュニケーションが取れていれば、気持ちよく手を貸してもらえた上で、仕事のスピードが激変しますよ。
同じミスは何があっても繰り返すべからず
例えば、喀痰吸引を行うとき、私は無意識に患者さんの鼻腔を覗き込むように顔を近づけていたのですが、ある先輩看護師から「感染リスクが高まるから自分の顔を患者さんの顔に近づけないでね」と指摘を受けました。
しかし、その後しばらくして、同じ先輩の前で喀痰吸引の手技を見てもらった際に、また同じように患者さんの鼻腔に自分の顔を近づけてしまったのです。
「顔近づけないでってこの前も言ったよね。なんでできてないの?」
先輩からは当然厳しい声で叱責が。
医療職は、患者さんの命を預かる仕事なので、ミスは絶対に許されません。
「吸引圧は20kPa以下」、「滅菌手袋の清潔を保持する」など、直接患者さんに危害を与える恐れがあることに対することはマニュアルを見直せば何度でも確認ができます。
しかし、先輩から業務中に言われた何気ない指摘は、その場で記憶に刻み込むか、それができないならば、なんとかタイミングを見つけてメモをとり、繰り返し確認を行える状態に自分で工夫する必要があります。
ここで妙齢の社会人看護師がぶち当たるのが「流動性知能」と「結晶性知能」の話。
看護師の国試にも出題されるので、看護師なら誰しもが知っているであろう「流動性知能は20歳頃をピークに低下する」という悲しい研究結果は看護学生の時から痛い程痛感していたと思います。
たとえば看護学校内で定期的に行われる実技演習。
事前学習を行ってくるとはいえ、実際に先生方の模範演習を見てから、すぐに学生たちがその通りできるように順番に実技演習を行っていきます。
そのときの現役学生たちの飲み込みの早いこと!
社会人から看護学生になったメンバーは細かいところでうっかり抜けてしまうところも、現役学生たちは当たり前のように再現していました。
私たちの学年だけなのかわかりませんが、筆記テストでは社会人経験者の方が圧倒的に成績が良かったです。
単位を落とす社会人経験者はほぼおらず、対して現役学生たちは単位を落とすメンバー続出!
しかし、目の前で行われたことをすぐさま記憶し、すぐに再現して見せる能力は現役学生たちに到底敵わないと、いつも社会人経験メンバーと話していました。
そして、その能力は看護師として働く上で非常に大切であることに気が付くのにそう時間はかかりませんでした。
私の様に急性期に配属された場合、病棟の主要メンバーは20代~30代前半であることが多いでしょう。
おそらくそれ位の年齢の看護師さんには、流動性知能の低下がいかなるものか到底理解ができないと思います。
場合によっては「この前言ったことと同じミスをするなんて、やる気がない」と捉えられてしまいかねません。
私だって信じられません、自分の記憶力がこんなに衰える日がくるなんて。
私はもともと記憶力には自信がある方でしたから。
でもこれが現実です。
現実はできるだけ早く受け入れることが大切。
自分はこの病棟の中で飛びぬけて流動性知能が低い、だから周りと同じやり方をしていたらミスがなくならない、誰よりもメモをとり漏れなく実行する工夫をする。
このことを意識するようになってからだいぶミスを減らせるようになりました。
患者さんの変化は逐次報告すべし
ある日、夕方になって呼吸状態が悪くなった私の受け持ち患者さんがいました。
喀痰吸引を行ってもSpO2の上昇が見られず、プリセプター看護師に報告し、医師に確認した上で酸素送気をすることになりました。
幸いその後、患者さんの呼吸状態は改善したのですが、「いつから呼吸がおかしくなったの?」という質問に対し、そう言われてみると朝から少し呼吸が荒い様子があったが発熱もなくSpO2の変化もなかったため様子観察していたと答えると、それまで普通に報告を聞いていた先輩の目つきが変わり「それ私に報告してないよね。夜勤さんが帰っちゃってたなら、昨日病棟にいたメンバーに患者さんの昨日の呼吸状態はどうだったのか聞いたの?」と問いただされました。
”何か変だ”と感じたことが急変の予兆だったというのは、急変した後になって気づくこともたくさんあります。
先輩看護師によっては、「え?それ報告するようなことじゃないでしょ」とバッサリ切り捨てられることもあります。
しかし、その後状態が悪化するか否かに関わらず、「”何か変だ”を報告していない」ということは「患者さんを危険な目に遭わせた」と同義のため、その時点でその看護師の評価はどん底まで落とされます。
よくよく周りを観察してみると、ある程度経験年数を重ねた先輩看護師でも、「あの患者さん、なんかいつもより反応悪いんだよな~。う~ん。一応リーダーに報告しておくか~」と言って、リーダーに報告している様子が見られました。
そのことに気づいてからはどれだけ先輩看護師から面倒くさそうな態度を取られても、逐次報告を行うようになりましたが、時すでに遅し。
その後長い間私は重症患者さんを担当させてもらえなくなりました。
患者さんの正常、異常は新人看護師には判断がつきません。
そのため先輩看護師は特に新人に対して「”何か変だ”を報告できるかどうか」を非常に重視して見ています。
当たり前です。
患者さんたちの命を守ることは看護師の使命なのですから。
社会人経験のある看護師は特に、これまで行ってきたどんな仕事よりも、最も重たいものを預かっていることを認識し、早期にマインドセットを変える必要があります。
あの日の午前中の自分にそれを教えることはできません。
でも、これを読んだ皆さんはどうか私と同じ失敗をしないでほしいと切に願います。
まとめ
今回は当時を思い出して、悲しかったり悔しかったり、身をよじりながら記事を書きました。
読んでくださった方の中にはこんなのこと出来て当たり前と思う方もいるかもしれません。
でも、もし私と同じように社会人から看護師になって苦しい想いをしている方がこの記事を読んでくれたなら、少しでも役に立つ情報を共有したい。
そういう願いを込めました。
どうか、負けないで。
このブログは転職ブログですが転職したいと思わずに新人時代を過ごせるならその方が絶対に良いに決まっていますから。
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