厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、看護師の平均年収は約508万1700円です。
これは、全産業の平均年収よりも高い水準となります。
ただし、医療機関では年功序列の考えが根強く、年収は勤続年数に応じて上昇する傾向にあるため、若手看護師を中心に、「給与が労働負担に見合わない」「収入アップを計りたい!」と考える看護師も多く存在します。
この記事では、看護師が高収入を目指したときにとれる具体的な方法を4つ紹介します。
夜勤回数を増やす
現勤務先に夜勤があれば、夜勤回数を増やすことで収入アップを叶えることができます。
2交代制の夜勤は、一般的に16時間勤務(うち2時間休憩)です。
日本看護協会「2023年病院看護実態調査報告書」によると、2交代制で貰える夜勤手当は、夜勤1回あたり平均11,368円でした。
同報告書によると、2交代制のひと月の夜勤回数は平均4.9回のため、1ヶ月あたり55,703円の夜勤手当が見込まれる計算になります。
3交代制は、24時間を日勤・準夜勤・深夜勤のシフトにわけ、いずれのシフトも8時間勤務です。
同上の報告書によると、3交代制で貰える夜勤手当は、準夜勤1回あたり平均4,234円、深夜勤1回あたり平均5,199円でした。
また、同調査において、3交代制のひと月の夜勤回数は準夜勤・深夜勤を合わせて平均7.5回です。
仮にひと月に準夜勤を4回、深夜勤を4回行った場合、合わせて37,732円の夜勤手当が見込まれる計算になります。
夜勤回数が増えることで、収入が増えても、体調管理が難しくなることもありますので、自身の体力に応じた働き方を行うように十分に注意しましょう。
昇進して管理職に就く
看護師の管理職は、主任→看護師長→看護部長とステップアップしていくのが一般的です。
一般スタッフである看護師の一段上にあたる管理職が、看護主任です。
10年以上の勤務があり、能力と実績を認められることで昇格することが多いです。
患者さんの病床使用状況の他、病棟内の問題点、ヒヤリハットの把握を行い、より安全で最善の看護が行えるように改善を図ることも役割です。
また、一般スタッフの看護師から相談を受けたり、指導をするほか、看護師長や他の看護主任との連携などを行います。
看護師長は、豊富な経験や知識を必要としますので、実務経験が数十年以上なければ、昇格することは難しいことが多いです。
看護師長は、所属看護師の育成・管理、他部署、多職種との連携、トラブル時の管理などを行います。
各病棟の看護師のトップとして、統率力、判断力、コミュニケーション能力が求められ、大きな責任が伴う役職です。
看護部長は、病院によって副病院長ポジションにあたることが多く、経営陣の一人として病院・施設を運営するのが役割となります。
採用者の面接・採用、院内の看護師の人員配置の決定、院長や事務長と病院運営へ参画、院長と現場看護師の意見調整、地域の関連施設や外部の病院などとの交流、連携など非常に幅広い業務を行います。
高収入が見込まれるとはいえ、原則各病院に1人という非常に限られたポストになります。
看護師長、看護部長ともなれば年収700~800万円も狙うことが可能です。
専門・認定・特定・診療看護師としてキャリアアップする
専門的な資格を取得したり、特定の行為を行うことができるための研修を修了することで、手当の支給が期待できます。手当がない場合でも、在職中に取得すれば「特定の分野に対し専門性を高めた」と評価にもつながりますし、転職する際も強力なアピールポイントになります。
専門看護師とは?
看護師として5年以上の実践経験を持ち、看護系の大学院で修士課程を修了して必要な単位を取得した後に、専門看護師認定審査に合格することで取得できる資格です。
患者・家族に起きている問題を総合的に捉えて判断する力と広い視野を持って、専門看護分野の専門性を発揮しながら専門看護師の 6 つの役割「実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究」を果たし、施設全体や地域の看護の質の向上に努めます。
2023年12月現在、3,316人の専門看護師が全国で活動しています。
がん看護 | 慢性疾患看護 | 感染症看護 | 精神看護 | 老人看護 |
在宅看護 | 急性・重症患者看護 | 母性看護 | 地域看護 | 小児看護 |
家族支援 | 遺伝看護 | 災害看護 | 放射線看護 |
認定看護師とは?
看護師として5年以上の実践経験を持ち、日本看護協会が定める600時間以上の認定看護師教育を修め、認定看護師認定審査に合格することで取得できる資格です。
患者・家族によりよい看護を提供できるよう、認定看護分野ごとの専門性を発揮しながら認定看護師の 3つの役割「実践・指導・相談」を果たして、看護の質の向上に努めています。
2023年12月現在、22,350人の【A過程】認定看護師、3,745名の【B過程】認定看護師が全国で活動しています。
従来のA課程(21分野)と、2021年度から認定審査が開始したB課程(19分野)があります。
B課程には特定行為研修が組み込まれています。
A課程は2026年度に教育が終了し、2029年度に認定審査が終了します。
感染管理 | 糖尿病看護 | 乳がん看護 |
皮膚・排泄ケア | 認知症看護 | 小児救急看護 |
緩和ケア | 摂食・嚥下障害看護 | 慢性心不全看護 |
がん化学療法看護 | 脳卒中リハビリテーション看護 | 慢性呼吸器疾患看護 |
集中ケア | 訪問看護 | 透析看護 |
救急看護 | 手術看護 | がん放射線療法看護 |
がん性疼痛看護 | 新生児集中ケア | 不妊症看護 |
感染管理 | 手術看護 | 糖尿病看護 |
がん放射線療法看護 | 小児プライマリケア | 乳がん看護 |
がん薬物療法看護 | 新生児集中ケア | 認知症看護 |
緩和ケア | 心不全看護 | 脳卒中看護 |
クリティカルケア | 腎不全看護 | 皮膚・排泄ケア |
呼吸器疾患看護 | 生殖看護 | |
在宅ケア | 摂食嚥下障害看護 |
特定看護師とは?
法律上、「特定看護師」という資格はありません。看護師として3~5年の実践経験を持ち、指定研修機関にて特定行為研修を修了した看護師には、指定研修機関から、特定行為研修修了証が交付されます。
指定研修機関によっては、eラーニング等の通信による方法で研修を実施しています。
特定行為研修を受けた看護師は、患者さんの状態を見極めた上で、医師又は歯科医師の判断を待たずに、手順書により、タイムリーな対応が可能になります。
今後の在宅医療等を支えていく看護師を計画的に養成していくことが特定看護師要請の目的とされています。
2023年3月現在、6,875人の特定看護師が全国で活動しています。
特定行為は、診療の補助であり、看護師が手順書により行う場合には、実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要とされる38行為であり、領域別に実施頻度が高い特定行為をパッケージ化し研修が可能となりました。
下記はそのうちの一例である、在宅・慢性期領域パッケージです。
特定行為区分 | 特定行為 |
呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連 | 気管カニューレの交換 |
ろう孔管理関連 | 胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル 又は胃ろうボタンの交換 |
創傷管理関連 | 褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない 壊死組織の除去 |
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 | 脱水症状に対する輸液による補正 |
診療看護師とは?
海外のナースプラクティショナーをモデルにした高度実践看護師ですが、現段階では民間の資格です。
看護師として5年以上の実務経験を持ち、かつ大学院修士課程を修了してNP資格認定試験に合格する必要があります。
合格後は、患者のQOL向上のために医師や多職種と連携・協働し、倫理的かつ科学的根拠に基づき、医師の指示の下、診療の補助を行います。
国内では(一社)日本NP教育大学院協議会が認定しており、2023年1月時点の認定者数は664人、うちプライマリ領域(成人・老年、小児)が155人、クリティカル領域が509人となっています。
日本看護系大学協議会と日本NP教育大学院協議会、日本看護協会は、米国等のような医師の指示を受けずに一定レベルの診断や治療などを行うことができる新たな看護の国家資格の創設を求め、連名で自民党看護問題小委員会に要望書を提出しています。
年収の高い職場へ転職する
5年以上など実務経験を積んだ看護師は、転職での給与アップも考えられます。
以下では高収入が期待できる職場について紹介します。
規模の大きい職場
大学病院や地域の中核を総合病院は、比較的高めに給与が設定されています。
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、病院の規模別でみた看護師の年収は以下の通りです。
規模が大きいほど給与が高くなる傾向にあることがわかります。
企業規模 | 年収 |
---|---|
10~99人 | 約460万4300円 |
100~999人 | 約485万2700円 |
1,000人以上 | 約556万1000円 |
訪問看護ステーション
訪問看護師の給料は、夜勤がない看護師の働き方の中では高めの水準です。
訪問看護師の給料が高い理由は、主に在宅療養を希望する人数の増加率に比べて、訪問看護を行える看護師が不足していることにあります。
各訪問看護ステーションでは、人材確保が大きな課題であり、高収入を提示することが多いのです。
また専用の携帯電話を持ち帰って自宅待機を行うオンコール当番日が、月4回~設けられていることが多く、1回のオンコール当たり1000円~3000円程度の手当てがつくことも収入アップに繋がっています。
オンコールを受けて実際に出勤した場合は、オンコール手当とはまた別に、出勤手当などを設けられている訪問看護ステーションがほとんどです。
出勤の手当は1回当たり5000円~1万円程度ですが、勤務地により大きく幅があります。
訪問看護は相談対応やメンタルケアといった幅広い仕事に基本的に1人で対応する必要があるため、3~5年程度の臨床経験が必要とされてきました。
しかし、近年の在宅医療のニーズの高まりもあり、先輩のOJTや研修といった教育体制を整備することで新卒でも受け入れる事業所が増えてきています。
まとめ
いかがでしたか?
看護師は働き方によって十分に高収入を狙えます。
あなたの頑張りが正当に評価され、待遇に反映される環境に出会えるために、まずは色々な選択肢があることを知っておきましょう!
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